kml:
さっきね、知らない人にぶつかって、死ねババア、って言われました。ムカつきました。
そう言うと彼は、
「そういうことって、ときどき起きるんですよね」
と言った。
「僕にもあなたにも、その種のことを言われる可能性はけっこうあります。でも、そんなので、死んでは駄目です」
まさか、と私は言う。まさか、知らない人に死ねって言われて死んだりしないです。
「それは、今あなたが健康で、人生を楽しんでいるからだ」
「もしも具合が悪くて、何も楽しくないときに死ねと言われたら、どうしますか。生きてても死んでてもどっちでもいいやと思ってるときに言われたら、引きずられるんじゃないですか」
「言うほうはたぶんなにも考えていない。年長の女性が自分に都合の良くない行動をとったら反射的に死ねババアと言う人はいっぱいいる」
「死んでほしいんじゃないんです。ただの苛立ちの表現として言うんです。言われるほうだってそんなことはわかってる。でも弱っていたら、字面通りに響いてしまうことだってあります」
「この世にはそういう、粗雑で無造作で薄っぺらい悪意がいっぱいある。一般的に求められる役割が果たせない人間には、そういうことが嫌でもわかる」
私はみっともなく動揺した。
大丈夫です、そんなこと言う人はすごく少ないです、たまにいても私は傷つかないです、死なないから大丈夫です、ちゃんと健康で元気でいますから、人生は楽しいですから、大丈夫です、と言った。